初期作品の魅力
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春川ナミオ氏が、初期の自分の作品は上手に描けていない気がするので好きではない、とおっしゃっておられたが、私は好きである。
スタイルや構図に関しては、後期に発表された作品によりいっそうの迫力を感じることも確かにあるが、女性の表情や、そこに至るまでのプロセスなど、理想の姿を模索していた時期ならではの、未熟さゆえのデリケートな味わいが感じられる。
後期作品に比べると、お尻のフォルムや肌の質感の描き込みが物足りないとは言えるかもしれない。
だが初期の春川の関心は、シチュエーションやプロセスとしての顔面騎乗へのこだわりが強かったのではないかと思われる。
猿ぐつわをかまされて、まさにこれからお尻が顔の上にのしかかってくる瞬間。うっすらと目をあけて恍惚としているようにも見える。責待刻の刹那が表現されている。
男の表情が見られる例
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なんで俺、こんなことしてんだろう?
そんなにうれしそうでもない男の表情が印象的な作品。
初期の作品ではこのように、男性の顔がたまに描かれている。お尻の下になって顔が見えない、またはあえて見せないような構図が多い春川作品だから、この作品のようになんともいえないユーモラスな表情が感じられる図というのは珍しい。凡人には近寄りがたいどろどろしたイメージが主流のSMの世界において、ほのぼの感が味わえるユニークな作品である。
こういうのをちょっとだけFemDomと言えるのかな?
ナミオM画廊シリーズ
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「奇憚クラブ」ではイメージ・ギャラリーという、そのページの小説作品とは関係なく一コマものイラストがよく掲載されており、そこでは無名の読者投稿作品とともに、 室井亜砂路 や岡たかしなどのビッグネームも見られた。春川ナミオの場合1970年代初期からすでに「ナミオM画廊」というシリーズで登場している。この時期はまだ繊細なグラデーションの陰影はみられず、フラットな画風であった。