マゾヒズムの力学
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圧倒的に顔面騎乗という構図で描かれることのほうが多い春川作品の中においては、このようにストレートなクンニリングスをイメージさせるものは珍しいかもしれない。少し(気にならない程度の)違和感が漂う。
縛られた両手は女性が腰を前に突き出すことで引っ張られ、なおかつ男の顔は女性の陰部に埋まり込み微妙な圧迫感が増す。これは顔面騎乗にも似た幸福感を味わえるようだが、女性の方もその反作用を利用してオナニーしているようにも見える。それにしても、柱に縛りつけられた男の両手の間にどうやって彼女は入ったのだろうか?
どうでもいいか、そんなこと。
ノーマルなSEXの前戯として行なわれるクンニではあるが、縛られて強制的にさせられるというところにマゾヒズム的な快楽があるわけで、そんなこと言われなくてもわかってるって。(。。)☆\バキ
写実を越えた寓意性
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初期の春川作品には物語やメッセージ性が色濃く反映されていたが、だんだんと男の表情が消えていくなど、抑制された表現の中に抽象的な寓意性が読み取れるようになる。春川が思い描く幻想と、見る側の妄想的イメージがシンクロするとき、そのあいまいなメッセージが明確になる。
このイラストでは男の頭がほとんど女性の尻の中にすっぽりと入り込み、見かたによっては首がペニスのようにも見える。顔面騎乗シリーズにおけるこのようなデフォルメの傾向は時々みられるのだが、これが意図的なものかはともかく、見るもののイマジネーションによってエキサイティングな解釈が可能となる寓意性が、春川作品の大きな魅力だ。特に春川のイラストでペニスが強調されて描かれることはまれであるため、この図には少しショッキングな印象を受ける。
男の表情が見られる例
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なんで俺、こんなことしてんだろう?
そんなにうれしそうでもない男の表情が印象的な作品。
初期の作品ではこのように、男性の顔がたまに描かれている。お尻の下になって顔が見えない、またはあえて見せないような構図が多い春川作品だから、この作品のようになんともいえないユーモラスな表情が感じられる図というのは珍しい。凡人には近寄りがたいどろどろしたイメージが主流のSMの世界において、ほのぼの感が味わえるユニークな作品である。
こういうのをちょっとだけFemDomと言えるのかな?
甘美なる苦痛
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昔の「奇憚クラブ」にしても、比較的新しい「SMコレクター」にしても、男性マゾヒズム願望、または男のフェチ的嗜好を満たしてくれるコンテンツが少なかった中で、唯一春川ナミオのイラストだけがそうしたイメージを提供してくれていた。
当時は「鞭で打たれたい」といった願望は特に持ち合わせていなかったものだが、未知の世界の、知らなかった感覚を、春川の作品的イメージを触媒として開発されたという面がある。
もちろん小説作品や読者投稿、グラビア写真からもインスパイアーされるのではあるが、春川ワールドの持つインパクトに匹敵する素材は当時見つけるのは困難であった。
今でこそ刺激の強い、よりインパクトのあるイラストやグラビア写真が氾濫しているものの、当時の春川作品から受けた影響ははかり知れないものがある。